「いつ勉強するのか尋ねると…」 川島永嗣、高校時代の恩師が語る「求道者」の凄さ
「これだけ理不尽な競技ない」―指導哲学の礎にある「理不尽 愚直」の意味
就任7年目、持ち前の情熱と技術指導で95年の第74回全国高校選手権に初出場してからも、不断の努力を重ねて埼玉屈指の強豪校に栄達させ、全国高校選手権に5度、全国高校総体に7度、関東高校大会に3度出場。ワールドカップを2度経験した日本代表のGK川島永嗣(仏1部メス)をはじめ、MF坂本将貴(元J1市原)やDF菊地光将(J2大宮)ら多数のプロ選手を育てた。
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「川島はサッカーの求道者のようだった。GKコーチはいなかったから自分でメニューを考えて練習していた。テスト前になると誰もいないグラウンドで、イメージトレーニング。いつ勉強するのか尋ねると、『授業中に全部マスターします』って。大したものでしたよ」
川島に口酸っぱく注意したことは一つだけ。仕事場が広範囲に及び、DFの持ち場まで進出することが多かったので、「俺が俺がばかりじゃ駄目だ。人に任せる時は任せなさい、と何度か言い聞かせたものです」と述懐する。
グラウンド脇のネットには「理不尽 愚直」という横断幕が掲げられていた。これこそ野崎監督の指導哲学のベースではないか。サッカーは手を使えないし、広そうで狭いゴールに向かう途中でいろんな邪魔が入る。1点を巡って様々な出来事が起こる。らつ腕監督は「これだけ理不尽な競技もないが、だからこそ何があっても屈しない精神力と技術が必要なんです。愚直にこれをやり続けることが重要。社会に出れば、もっと理不尽なことばかりですからね」と解説してみせた。
およそ四半世紀、浦和東で24年指導した多くの経験を母校の復活という集積に変えられるか。浦和南は昨年3月、埼玉県の公立高校として初の人工芝グラウンドも完成。浦和東での初タイトルが7年目、今季は母校で6年目を迎えたとあり、そろそろ結果を出したい。
筑波大時代には三菱重工、古河電工、日立製作所、読売クラブなど日本リーグの名門の誘いを断って教員の道を選んだ。「南の復活が自分の使命。インターハイ予選までには攻撃の質を高めたい」と野崎監督は、敗戦のショックからすぐに気持ちを切り替えて前を向いた。
(河野 正 / Tadashi Kawano)