育成年代で目指す「リーグ戦文化」定着 日本バスケットボール協会が見せる本気度の高さ
リーグ戦文化の定着で目指す「選手と指導者の成長」
ガイドラインに記されたリーグ戦文化の説明は明解だ。目的は「拮抗した対戦を増やし、選手・指導者の成長を促す」「登録チームに一定公式試合数を確保する」の2点。その補足として「事前に計画・予定された複数の試合に向けて十分な準備時間を確保することで選手と指導者が成長し、チームの成熟につながること」「長期リーグスケジュールの中にオフ期間を設け、選手や指導者が自分と向き合い、自己研鑽できる時間を設けること」などが加えられている。
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「例えば、高校には全国に約4000チームがありますが、単純計算で半分の2000チームが1回戦で終わってしまう。年間3大会あるとしたら、公式戦を3試合しか戦えないチームが大半を占めてしまいます。選手にとってはゲームを通して得る学びは大きい。その機会をどのチームにも均等とするためには、リーグ戦であれば試合数を増やせます。10チームのリーグ戦であれば、1チームあたり9試合できる。その9試合の日程と対戦相手が事前に分かっていれば、その道のりを歩むために、コーチはどうトレーニング計画を組むのか、選手はどう自分を高めていくのか、トーナメント文化には無いプランニングが伴います。こういった繰り返しの中で、選手個々の成長過程を重視する考え方である“育成マインド”が実現できると考えています」
各都道府県により参加チーム数や実施環境が異なったり、コロナ禍による活動制限もある中、2022年までの実施を目指しているが、U18世代ではまず群馬県や京都府、新潟県などがリーグ戦を導入。兵庫県など150チームを超える規模の地域でもリーグ戦がスタートし、200チーム規模の神奈川県でも準備が進んでいる。既に実施した現場からは多くのポジティブなフィードバックがある反面、未実施県には各県個別の課題もあるという。47都道府県全てで導入されるまでは、もう少し時間がかかりそうだが「焦らず、現場の声を聞きながら進めていきたい」と岩崎氏は言う。
リーグ戦で試合数が増えれば、より多くの選手たちが試合に出られ、真剣勝負をした思い出を持つことができる。勝利を求めるあまりメンバーが限定されがちなトーナメント戦の場合、公式戦に一度も出場しないまま競技を終える選手も少なくない。将来的に競技を離れた時、どちらがよりバスケットボールというスポーツに愛着を持っているか、答えは明らかだろう。
JBAでは「バスケで日本を元気に」というスローガンを掲げ、代表やBリーグ・Wリーグのトップ選手はもちろん、育成年代の選手たちやその家族、バスケットボールを愛する全ての人々で競技を盛り上げ、さらには日本をバスケで盛り上げていくことを目指している。この思いを実現させるためにも、JBAが本気で取り組む育成年代のリーグ戦文化定着は大きなカギを握ることになりそうだ。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)