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【今、伝えたいこと】プロ野球から介護業界へ 集団感染リスクと闘う江草仁貴「社会的受け皿なくせない」

つらく苦しい時も「いつかは終息する日が来る。そのためにも我慢が大切」

 突如やってきた元プロ選手のコーチの言葉に、部員たちは当初「なんだ、こいつ? みたいな感じでしたよ」と江草氏は笑うが、この3月にうれしいサプライズがあった。卒業する部員から寄せ書きした色紙をプレゼントされたのだ。

「僕が初めて教えた部員たちだったんですよ。もらった色紙に『江草コーチと出会えたことで人間的にも成長できたと思います』とか、『江草コーチの元で野球をできたのが、僕の人生の自慢です』とか、お世辞をいっぱい書いてくれたんです(笑)。今までプロで自分がいかに生き残るか、周りとの戦いだったので、巣立っていく部員を見守るのは初めての経験。なんだかすごいことだな、と思いました」

 指導する際には「独りよがりで自分のいいと思うことを押しつけても、部員たちは受け入れてくれない。なので、部員たちのレベルに合わせて、求めていることに合わせて指導すること」を心掛けている。一人ひとりと向き合うこと。この姿勢はデイサービスでも変わらない。「来て話をするのが楽しい人もいるし、運動をしたい人もいる。一人ひとり求めていることは違うんですよ」と貫いている。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、日本に限らず世界が今、我慢の時を過ごす。見えない敵との戦いに、途方に暮れそうになる時だからこそ、江草氏は日々、達成感を味わう努力をしているという。

「毎日1個、今日はこれをやったという達成感を作ろうと思っています。何でもいいから1個だけ目標を決めて、毎日クリアしていくんです。そうすると小さな達成感であったり、充実した気持ちを感じられるので。気持ちを前向きにするためにも、皆さんもぜひ。

 今はつらく、しんどい時ですが、いつかは終息する日が来る。そのためにも我慢が大切。一人ひとりがしっかり意識を持って、なんとか早く終わらせられるよう頑張りましょう」

 頑張った先にはご褒美が待っている。また、笑顔で日常を取り戻すためにも、今はじっと我慢だ。

■江草 仁貴(えぐさ・ひろたか)

 1980年9月3日生まれ、広島県出身。地元の盈進高から一般入試で専大に入学。硬式野球部では3年間、登板機会に恵まれなかったが、4年で才能を開花させた。チームが東都大学リーグ2部から1部に昇格する原動力となり、02年ドラフトで自由獲得枠で阪神に入団。主に中継ぎとして活躍した。西武を経て、12年に広島へ移籍。17年を最後に現役を退いた後は、広島市内でリハビリ型デイサービスを経営する一方、18年より大阪電気通信大で硬式野球部のコーチを務める。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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