もし、部活中に選手が大怪我をしたら… スポーツ事故訴訟で問われる「安全配慮義務」
スポーツ事故が発生したら保護者の対応は? 納得できる話し合いができない場合は相談窓口や弁護士を活用
では、わが子が部活動中に事故に遭い、保護者として事実の解明を求めたい場合はどうすればいいだろうか。
「まずは顧問の先生、学校に相談です。その対応に不信感を抱いたり、責任の所在がはっきりされない、損害賠償を請求したい、などの場合は弁護士に相談するとよいでしょう。前述のように、近年は一般の人でも気軽に弁護士に依頼することができるようになりました。もし弁護士に相談したいけれどどこにいけばいいかわからないというときは、地域の弁護士会の相談センターを訪ねてもいいですし、ネットでスポーツ法に詳しい弁護士を探してコンタクトをとってもよいと思います。
文部科学省が全国に配置する方針を掲げた、『スクールロイヤー』と呼ばれる弁護士を置いている学校も増えてきました。スクールロイヤーは校内で起きた問題について、法律の視点から助言する役割を持っています。学校の部活で発生したスポーツ事故なら、スクールロイヤーに相談してもいいでしょう」
突然の事故を予測し未然に防ぐことは難しいが、怪我につながるような不調や疲労の状態に気づくためには、日頃から子どもたちを注意深く観察することが大切だという堀口氏。
堀口氏が紹介してくれたのは、「なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか―米国発スポーツペアレンティングのすすめ」(谷口輝世子著)
「子どもは自分で自分のことをまだ正確に説明できません。本人がいくら『大丈夫』と言っても、実際大丈夫ではないことがあるんですね。指導者ならまず、練習中の選手の様子を観察してほしいです。本人が『まだやれます』と言っても、本当に問題ないのか、厳しくチェックする必要があります。
保護者の皆さんには、子どもの“いつもと違う”違和感を敏感に察知していただきたいです。食事を残す、口数が少ない、足を引きずっているといったときは、身体に異変があるのかもしれません。そういうときは練習を休ませ、『1日くらい休んでも問題ない』と本人を安心させる言葉をかけたりするとよいのではないでしょうか」
それでも事故が起こってしまった場合の備えとして、平時から緊急時の対応方法を確認し理解しておくこと。AED(※1)の設置場所を把握し、エマージェンシーアクションプラン(緊急時対応計画)を作成しておくとよいだろう。(作成例は、「スポーツ事故防止ハンドブック」内にもあり)