元プロバスケ選手が伝える「全国の基準」 就任5年で初出場、インハイの熱気を知った鹿児島の新たな一歩

地元・岡山の勢いにのまれて苦戦も…後半は持ち味を発揮
「鹿児島高校が少しずつ強くなっていくのを見て、自分も全国大会に出たい」と入学を決めた福元啓太(3年)も、「上の舞台を経験している指導者に教えていただけるのはすごく貴重ですし、西堂先生は県外の強豪校の先生の知り合いが多いので、練習試合に行ったり、他ではできない経験ができています」と刺激を受けてきた。
しかし、初めての全国の舞台は、「練習試合とは緊張感や気持ちの持ちようが全然違った。初戦の相手が岡山で、ホームというのもあって、自分たちにはディスアドバンテージのあるなかでの試合でした。もともと、入りの部分は自分たちの課題ではあったんですが、緊張もあってのまれてしまい、ルーズボールやリバウンドで相手に流れを持っていかれてしまいました」。
西堂コーチも「硬くなるのは分かっていたので、コミュニケーションを取ってほぐしたのですが、地元開催ということで相手の熱気と応援の量に押されて、硬い入りになってしまいました」と悔やんだ。
スピードもディフェンスの強度も、これまで経験したことのないものだった。いつもならドライブで突破できるところを止められて、ターンオーバーが続いた。さらに相手のタフショットが入ったこともあって、勢いに乗りきれなかった。
それでも後半は、強みであるインサイドと3ポイントシュートで食い下がった。西堂コーチから常々「ゲームキャプテンとして、声とプレーでチームを引っ張ってほしい」と言われている福元は、「自分がやらなきゃと思ったのもありましたし、調子が良かったので」と40分間で13本中6本の3ポイントシュートを決めて22得点をマーク。試合のなかで自分自身の“アップデート”を図ってみせた。
西堂コーチは「リードしても我慢できるようになったところは、少しは自信がついてきたのかなと感じました。ただ、ここ一番でもう一つギアを上げないと全国では勝てないということを選手たちも自覚したし、僕ももう一回、チームを作り直さなければいけないと、あらためて“基準”を知ることができました。一気に二歩も三歩も進めません。全国の“基準”を知ることで一歩進んだと思えば、すごくいい収穫でした」と悔しさのなかにも満足感を滲ませた。
全国大会初出場という歴史的な一歩を、二歩目、三歩目にどう繋げていくか。それは選手たちが全国の舞台で感じた“基準”を、日常の練習にどう還元していくかにかかっている。
(山田 智子 / Tomoko Yamada)
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