【ハンドボール】“小さな夏の奇跡”の終わり 17人の麻生に残った涙と汗と、底抜けの笑顔
7月28日。全国高校総体ハンドボール女子2回戦。3年前に始まった、麻生(茨城)の小沼嘉樹監督と3年生5人の挑戦が終わりの時を迎えていた。応援スタンドへ挨拶に向かう指揮官とキャプテンの高野稀汐(3年)の表情は、敗者とは思えないほど、実に晴れやかだった。
主将、エースの相次ぐ故障を乗り越えて…小沼監督が感じた「新たなチームの胎動」
電光掲示板の時計が「30:00」を示し、ブザーが鳴った。
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麻生高校 16-27 高岡向陵高校
7月28日。全国高校総体ハンドボール女子2回戦。3年前に始まった、麻生(茨城)の小沼嘉樹監督と3年生5人の挑戦が終わりの時を迎えていた。
応援スタンドへ挨拶に向かう指揮官とキャプテンの高野稀汐(3年)の表情は、敗者とは思えないほど、実に晴れやかだった。
「3年間、楽しかった。このチームのみんながいてくれて、小沼先生が監督でいてくれたことが一番です」と、仲間の輪の中で高野は最後まで満面の笑顔を崩さない。
あふれる涙と汗をユニフォームで隠す選手たちを静かに見つめながら、小沼監督は嗄れた声でゆっくり語り始めた。
「本当に逞しいチームになりました。今までで一番いいプレーをしてくれました。昨日の試合で、2年生エースの浜田(桃花)が負傷退場するというあれだけのトラブルがあったにも関わらず、それを全く感じさせない底抜けの明るさ。ここに新たなチームの胎動を感じるというか、ここからが船出といいますか、そんな気がしてなりません」
この1年は、「トラブル」続きだった。
春の新人戦では県大会で初戦敗退。「同じ悔しい想いをしたくない。全員が私生活からジリツ(自立と自律)を徹底」(高野)し、夏に向けて立て直しを図っていた矢先、チームの支柱、キャプテンの高野が前十字靭帯損傷の大怪我を負う。
「キャプテンがいなくなって、最初は不安だった」(浜田)が、「強いキャプテンでありたい」と自分にできることを献身的に取り組む高野に導かれ、チームは結束。“キャプテンのために”という想いを原動力に、19年連続出場の絶対女王・水海道二を決勝で下し、20年ぶりのインターハイ出場を決めた。