女子に負けた弱小選手が五輪3連覇 野村忠宏氏が高校生に伝えた「魂の言葉」とは
「努力するのは当たり前」…現役柔道部員に伝えた言葉の真意とは
その後、胴着に着替えて柔道場に舞台を移し、柔道部員への指導を行った。ここでも、野村さんらしい言葉で柔道家の心得を授けた。部員に「全国大会に出たい人」と聞くと、全員が手を挙げた。その上で力説した。
「自分だけが全国に出たいわけじゃない。みんなが出たい。だから、頑張っているのは自分だけじゃない。努力するのは当たり前だし、努力することに満足しちゃダメ。そこからのプラスアルファの努力が必要になる。意味のある努力をできるようにしていこう」
ワンランク上の選手になるための意識を訴えると、インターハイ予選まで2週間を切っている選手たちは真剣なまなざしでうなずいた。そして、代名詞でもあった一本背負いを部員相手に実演し、技術指導も実施。現役時代は握力が40キロ程度で、ベンチプレスも60キロ程度だったという非力な現役時代、いかにして相手を投げ飛ばしてきたか、アドバイスを送った。
最後には「試合で『特別な自分』はいない。試合になったら120%の力を出せるなんてことはない。自信を持つためには、自分がここまでやってきたんだと思えるように練習することが大事」などと質疑応答にも答えた野村さんは、充実した2時間の指導をこう振り返った。
「普段、頻繁に高校生たちと触れ合う機会はない。彼らを見ていると、自分が弱いなりに一生懸命やっていたことを思い出す。この時間で何か一つでも柔道選手としても、若者としても今後の人生にとってプラスに変わることがあったらうれしい」
五輪3連覇した柔道界のレジェンドが、未知の可能性を秘めた現役高校生を指導する。野村さんが何よりも大事にしてきた「出会い」の実現によって、未来の五輪金メダリストがここから生まれるかもしれない。
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer