9回逆転弾の直前に「笑わせてくれた」 慶応、春夏甲子園に導いた渡邉千之亮が見た仲間の姿
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は26日、横浜スタジアムで決勝が行われ、今春のセンバツ代表・慶応が横浜に6-5で接戦を制し、2019年以来5年ぶり19度目の甲子園出場を決めた。「3番・左翼」で出場した渡邉千之亮(3年)が2点を追う9回に逆転3ランを放ち、劇的な展開で春夏連続の聖地行きを決めた。
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は26日、横浜スタジアムで決勝が行われ、今春のセンバツ代表・慶応が横浜に6-5で接戦を制し、2019年以来5年ぶり19度目の甲子園出場を決めた。「3番・左翼」で出場した渡邉千之亮(3年)が2点を追う9回に逆転3ランを放ち、劇的な展開で春夏連続の聖地行きを決めた。
2万7000人の大歓声に包まれ、マウンドに歓喜の輪が出来た。6-5で迎えた9回2死一塁、横浜の打者が打ち上げたフライを遊撃手が捕球して試合終了。5年ぶりの甲子園出場だ。その瞬間、慶応ナインは一斉にマウンドへ駆け出し、拳を突き上げて喜んだ。
9回大逆転の劇的な展開に、場内インタビューで森林貴彦監督は涙。「9回に2点を取って長い試合をしようと話していた。運にも恵まれてよく掴んだと思う」。3連覇を狙う横浜との死闘を制したナインを労った。
大舞台に強い3番が夏もヒーローになった。2点を追う9回1死二、三塁、渡邉が甘く入ったチェンジアップをレフトに打ち返した。球場全体が打球の行方を見守る。一瞬の静寂。白球は左翼席最前列に吸い込まれ、慶応の一塁側応援席からドッと歓声が沸いた。
敗戦までアウト2つから起死回生の逆転弾。優勝した春の決勝も2ラン2発を放ったお祭り男は「チームに貢献できて嬉しい気持ちでいっぱい。後ろの打者に繋ごうと打席に入った中で、甘い球を上手く打てて最高の結果が出た」と胸を張った。
春のセンバツでは初戦・仙台育英(宮城)戦で延長戦の末に1-2で敗れた。「甘い球を一発で仕留めることを大事にしてきた」と練習の成果を発揮。「ベンチ外の仲間が打撃投手をしてくれたり、コーチがアドバイスをくれたりしたおかげ」と感謝した。
劇的弾の裏には、伝統の「エンジョイ・ベースボール」の精神があった。打てる要因は「チームが楽しませてくれる」と渡邉。9回の打席に入る直前、ベンチにいた主将の大村昊澄(3年)や一塁コーチャー・安達英輝(3年)の叫ぶ姿が目に入った。「何を言っていたか覚えていないけど、笑わせてくれた」
プレッシャーがかかる場面すら野球を楽しみ、最高の結果を残す。そんな慶応野球を今度は甲子園で発揮する。目標は日本一。渡邉は「どんな相手でも自分たちの野球をして、野球を心から楽しんでいる姿を見せられたら」と誓った。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)