「重く、苦い」アジア杯4強敗退 永里亜紗乃、なでしこジャパンに問いたい覚悟と責任
露呈したなでしこの問題…軽いプレーと失点の時間帯
失点場面に象徴されるように、全体的に軽いプレーが目につくのは大きな問題です。サッカーにミスは付き物とはいえ、仲間のミスをカバーする気概が感じられないのもとても残念。全員が淡白な選択をしているから、体を張らなければいけない場面で簡単に前に入られて失点につながってしまう。
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極めつけは失点の時間帯で、立ち上がりと終了間際が最も危険なのはサッカーの常識です。それこそ小学生でも知っていることでしょう。絶対にやられてはいけない時間帯にやられてしまうと精神的に不利になり、それがメンタル勝負の部分も大きいPK戦で表面化してしまう。DAZNを契約して深夜に視聴しているほどのサッカーファンであれば、PK戦が始まる前から嫌な予感を抱いていたに違いありません。
チームとしての戦い方や方向性をひとつにできなかったのは監督の采配ミスと捉えられても仕方ないでしょう。2-2になってから守備固めで投入した高橋選手を前線へ上げましたが、チームとしてパワープレーを仕掛ける意図も見えない。就任から間もないことは言い訳でしかなくて、3連覇を目指し大会で結果を出せなかった責任は当然問われるべきだと思います。
このままだと女子サッカーの未来は本当に危うい。負けた中国やグループリーグで引き分けた韓国が強くなっていたのなら、アジア全体のレベルが上がったという見方もできますが、実状は違います。日本がまったく何もできなかったわけではないのに、結果も内容も見るべきところの少ない大会になってしまいました。
正直言って、収穫を挙げるのが難しいです。個人もグループもチームも持っている力を出し切って初めて得るもの、見える景色があるはず。それなのに最近の日本は出し切れていない試合が多過ぎます。あまりにも稚拙なミスが多過ぎて、課題や問題点すら見えにくくなっているのは本当に危険です。
約半年前に開催された東京五輪2020から監督が代わり、ピッチに立つ顔ぶれは多少なりとも変わりました。それによる変化がまったくないわけではありませんが、日本女子サッカーとして前進しているかと聞かれたら「?」と答えるしかありません。
アジア杯3連覇どころか決勝戦にも進めなかった日本が来年のワールドカップで何を目指すのか。もし本気で優勝を目指すとしたら、その道のりはとても険しいものになるでしょう。そして本当にその覚悟があるのかと、私は問いたい。
この屈辱を次に生かせないのであれば、明るい未来はないでしょう。それほどまでに重く、苦いベスト4敗退です。3連覇という最低限の目標を達成できなかった事実をしっかりと受け止めて、選手はそれぞれの所属クラブへ持ち帰る。そして自チームで変化や成長を見せること。それが日の丸を背負って戦う者の責任です。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)