錦織圭、優勢一転の逆転負け 「布石」となったチリッチの戦略「完全にサイド意識に」
敗因は「はっきりしている」
そんな錦織は勢いに乗り、第1セットを6-3で先取。しかし第2セットから崩れ、そのまま逆転負けを喫した。敗因はどこにあったのか。
「はっきりしています。ファーストセットはハイクオリティでした。楽天ジャパン・オープンでチリッチ選手が見せていたコート中盤での処理という課題もしっかりと突いていました。第1セット3ゲーム目の最初のブレークと、第1セット第9ゲームのセットポイントもチリッチ選手の中盤でのボールの処理ミスでした。相手のミスを誘発していた錦織さんの高い集中力が、セカンドセットの2度目のサービスゲームから欠けてしまった。疲労もあるでしょう。2日前のマレー選手との激戦の影響もあったと思います」
一方で、チリッチの戦略も見事だったと綿貫は言う。
「チリッチ選手が最初から最後まで同じことをやり続けた。サービスに関して長いスパンで戦力を組み立てていたように思います。第1セットではファーストサーブはワイドを狙うものが多かった。錦織さんもそれに対抗していましたが、セカンドセットからサービスのコースを展開していた。錦織さんは完全にサイドを意識させられて、リターンが苦しくなっていた印象を受けます。第1セットのワイドを狙い続けた戦略が完全に布石になりました。立ち上がりからファイナルセットまでやることも、クオリティも変えない。自分のプレーができるまで我慢を続けました」
ミスが目立った錦織。対するチリッチも強烈なサービスを軸に反撃に出た。結果、逆転負けを喫してしまった錦織だが、2年ぶりの4強入りは果たした。準決勝の相手は世界2位のジョコビッチ。1次リーグ2連敗から立て直せるか。錦織の巻き返しに期待したい。
◆綿貫敬介(わたぬき・けいすけ) 明治安田生命所属 世界ATPランキング1135位、ダブルス1024位(2016年6月時点)。埼玉県春日部市のグローバル・プロ・テニス・アカデミーの常任コーチを務めながら、世界ジュニアランキング2位の弟・陽介のツアーコーチも兼務。ジュニア時代には世界ランク5位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)ら実力者と対戦した経歴を持つ。
◆グローバル・プロ・テニスアカデミー 綿貫3兄弟を育て上げた父・弘次氏が校長を務める、世界を目指すタレントを育成するジュニア育成のアカデミーと一般のスクールを併設。レッスンは午前9時から午後9時まで。住所・埼玉県春日部市下蛭田2-1。電話番号048-755-5370。公式サイトは、http://www.global-sports-planning.com/
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer