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“普通の女の子”にだって憧れる 空手・植草歩が抱いた「女子力と競技力」という葛藤

女性と格闘家――。一見、相反するイメージを抱いてしまいそうな2つの言葉。これらの両立は可能なのだろうか。東京五輪の新種目として実施される空手で金メダル候補の植草歩(JAL)。世界の頂きに上り詰めた女王に、「女子力と競技力」について女子アスリートが持つ悩み、葛藤、考え方などを聞いた。強さを求めて汗を流す空手選手には、自由と責任が存在していた。

東京五輪で新種目の空手で金メダル候補の植草歩【写真:浜田洋平】
東京五輪で新種目の空手で金メダル候補の植草歩【写真:浜田洋平】

「女子力と競技力」は両立できるか、空手最重量級の五輪金メダル候補・植草歩に聞く

 女性と格闘家――。一見、相反するイメージを抱いてしまいそうな2つの言葉。これらの両立は可能なのだろうか。東京五輪の新種目として実施される空手で金メダル候補の植草歩(JAL)。世界の頂きに上り詰めた女王に、「女子力と競技力」について女子アスリートが持つ悩み、葛藤、考え方などを聞いた。強さを求めて汗を流す空手選手には、自由と責任が存在していた。

 女子組手68キロ超級で2016年世界選手権を制した27歳。階級制の競技で、植草は一番重い階級だ。女性と格闘家の両立で苦労したことに「体を大きくすること」を挙げる。手足が長く、体格の大きい海外選手を相手にするため、身長168センチの植草には増量が必須だった。今では笑って振り返るが、社会人2年目頃まで気にすることもあったという。

「体を大きくしようと思って大きくしていました。フィジカルトレーニングもやっているので筋力がついてくる。昔の服とか、普通の女性の服が着られないとか、周りに『足が太いね』って凄くバカにされました(笑)。今は(目標の)体重に達したので、体を大きくはしていないです。今の体重をキープしています」

 組手は手足を使った突き、蹴りなどによる寸止めが基本。相手に当ててはいけないが、不意に顔面に打撃をくらうことも少なくない。

 小学3年から始めた空手。オシャレを満喫する真っただ中の高校時代は、周りの友達と同じように“女子力”を意識するJKだった。空手選手として精進する一方で、体作りへの恥ずかしさや抵抗感のようなものを抱いていたという。

「女性として綺麗、かわいいと思われたい気持ちもあったので、そこを優先していた。だから『引退したらすぐに結婚する』とか、そういうバカなことを言っていましたね。幼いじゃないですか。今はオリンピックで優勝するためなら、そんなことはどうでもいい」

 大学時代も女子力高め。2013年に空手が東京五輪の実施種目候補に入った時は、卒業後に引退するつもりでいた。“普通の女の子”になりたい欲も捨てきれない。恋心だってあった。五輪は28歳で迎える。女子の空手選手で20代後半はベテランだ。しかし、徐々に覚悟が芽生え、東京五輪を目指すことを決意。15年9月に五輪種目に正式決定する頃には金メダル獲得を宣言していた。そして、完全に吹っ切れた時がある。

「(連覇を目指した)2018年の世界選手権で2位になってからかな。高校生からずっと女子になりたい欲は半端なかったけど、『いつでもできるじゃん』と思うようになった。世界選手権で負けてからは『何、戯言を言っているんだ自分』って思うようになりましたね。自分の中で凄く(実力や調子が)上がってきた時で、連覇しようと思っていたので。

 負けてしまったので、凄く自分の気持ちが乱れていましたね。昔は自分がどんな言葉を発して、どんな考えをしていたんだろうと振り返ったり、昔の記事を読んだりしました。昔は早く引退して結婚したいと言っていたけど、世界選手権で負けた時はもうそんなの何とも思わない。『優勝できるならそんなのいらない』と思うようになりました。悔しさもあったし、そんなことで感情が乱れるぐらいなら恋愛とかいらないなと」

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