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【今、伝えたいこと】無収入の選手、試合勘との戦い 藤井かすみが明かす「女子ゴルフ界の本当の苦しさ」

華やかな舞台は当たり前ではない【写真:荒川祐史】
華やかな舞台は当たり前ではない【写真:荒川祐史】

コロナが気づかせてくれたもの「いろんなことを忘れがちになってしまうなか…」

 中止の数が1試合、2試合、3試合と増えていく。「中止発表」の一報さえも“当たり前”に感じてしまうほど慣れてしまった。しかし、コロナによる打撃をマイナスに捉えるばかりでは前を向けない。藤井は「よかったという言葉はよくない」と強調した上で、今の女子ゴルフ界に改めて気づかせてくれたものがあるという。

「人気が凄く出てきて、ともするとあまりよくない方向に行きかねない時期だったかもしれません。試合を開催していただいていることに対して、当たり前に思うようになってしまうこともありますから。よかったという言葉はよくないですが、見直せる時期だったのかなと思います。

 今の時代はレギュラーツアーに出ていない選手たちでも、いい意味でチヤホヤしていただいてありがたい環境です。いろんなことを忘れがちになってしまうなか、その大切さに気づかせてくれたのではないかと思います」

 賞金額も上がり、有望選手はデビュー前からスポンサーがサポートしてくれることもある。1995年にプロテストに合格し、2001年から05年までに10勝を挙げた藤井は、当時と今の違いについて「圧倒的にサポートの差があります」と語る。

「今の方がテレビの放映も多いです。みんな賞金以外の収入が増えているので、“プロとして賞金を稼がないといけない”という感じはなく、プレーもしやすい環境なのかなと思います。女子ゴルフは夢のあるスポーツです。これだけ稼げるお仕事はなかなかないですから。ですが、予選落ちすると収入がゼロになる厳しい世界でもあります。女の子らしく華やかなのに、強いプレーも見られるのが面白いところだと思いますね」

 華やかさに満ちた反面、厳しさと隣り合わせのプロの世界。そんな女子ゴルフの魅力を感じられるのも当たり前のことのように思っていた。だが、過去にはツアーが逆境に立たされた時もある。2011年の東日本大震災。開催中だったツアーが競技不成立となり、直後の3試合が中止となった。2016年の熊本地震では、KKT杯バンテリンレディスオープン(熊本空港CC)の開幕前日に選手たちが被災。大会どころではなくなった。

 それでも、苦難から立ち上がった選手たちは募金など復興活動にも尽力。何よりプレーで思いを表現し、女子ゴルフの価値を示してきた。世界が直面したウイルスとの闘いは続いている。ツアーが無事に開幕した時、選手たちにどんな思いを持ってプレーしてほしいのか。藤井は切に願った。

「選手たちはいろんなことに感謝しながら試合ができるのではないかと思います。まず、できることに対する喜びを感じてほしいのが一番です。ゴルフができることに感謝して、ギャラリーの方々、主催者の方々などいろんなものに感謝をしてプレーしてほしいですね。そして、みんなの元気が出るようなハツラツとしたプレーをしてほしい。コロナに負けていないという姿を前面に出して、しっかり頑張ってほしいです」

 中止を避けるために力を尽くした人がいる。力及ばず涙をのんだ人もいる。今もなお一日でも早い開幕を目指し、歯を食いしばっている人たちがいる。そして、選手たちの笑顔を待つ大勢のファンがいる。

 すべて当たり前ではない。また近いうちに女子ゴルフの価値を知らしめてほしい。

(文中敬称略、第18回は女子プロゴルファー・笹原優美が登場)

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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