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“ワンチーム”でジョセフHCに届けた吉報 トンガ戦の裏側にあった「16人目」の献身

苦境を救ったのは“16人目のメンバー”布巻

 リーチによると、「峻(布巻)が話してくれたのは、(攻撃のとき)ゲインはできているが、サポート選手との間に差ができている。ラックで(に先に入られた相手防御を)はがそうとしてもできない。だから、抜けてからスピードチェンジして、ラックになる前に(サポートに)入れということ」だった。メンバーから外れて給水係を買って出た布巻が、チームに最も近い位置で戦況を見て的確な情報を伝えたのだ。


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“16人目のメンバー”のアドバイスで、後半途中から戦術を修正したジャパンは、密集戦に人数をかけてきたために外側のスペースが手薄になったトンガの防御網を攻めた。32分にSO田村優(キヤノン)のドンピシャのグラバーキックを右サイドで好捕したWTB松島幸太郎(サントリー)が防御を突破して奪ったトライ(ゴール)で34-7とリードを広げると、39分には途中出場のWTB福岡賢樹(パナソニック)が左タッチライン際を駆け抜けダメ押しトライ。左右にボールを振ってのワンツーパンチでトンガをKOした。

 前節フィジー戦は、東日本大震災からの完全復興に挑む釜石で初めてのテストマッチがチームを1つにまとめ、トンガ戦では指揮官の家族の悲報がジャパンを、さらにワンチームへと固めた。個々のコンタクトでもティア2クラスの南太平洋のアイランダー勢とも渡り合い、組織防御や、ボールを持った瞬間に全員が同じベクトルで攻撃を仕掛ける意識を共有するなど、チームとしての完成度も高めてきた。

 日本代表がワールドカップで対戦するアイルランド、スコットランドのようなセットプレーを起点に手堅い試合運びをみせる欧州の強豪との力試しが理想だが、残された時間での対戦は不可能だ。戦術戦略に長け、相手チームの分析でもティア2チームとは比較にならない欧州強豪と互角に戦い、勝利するには、さらなるセットプレー、ブレークダウンの攻防、そして組織防御、つまりラグビーの試合で勝つために不可欠なプレーの成長と精度アップが必要だ。

 8強チームしか立つことができないワールドカップ決勝トーナメントというピナクル(高み)へ、優勝をかけて10日にフィジー・スバで行われる米国代表戦を残すPNC、そして北海道・網走合宿、来月6日の南アフリカ代表戦(埼玉・熊谷)と続くチャレンジで、どこまでチームの進化を加速できるかが焦点になる。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)




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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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