「INTERVIEW / COLUMN」記事
睡眠不足から陥る“負のループ” 専門医が警告…「不眠になりやすい」スポーツ選手のリスキーな環境
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2024.10.10
コンディショニング

特集「アスリートと睡眠の質」第1回
睡眠不足や寝ても疲れが取れない日が続くと、練習や試合で力を発揮したり集中力を保ったりすることが難しくなります。そこで今回は、3回にわたって睡眠と運動パフォーマンスについて特集。第1回では睡眠が運動パフォーマンスに与える影響について、睡眠の専門医に話を聞きました。
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◇ ◇ ◇
「実は、スポーツ選手は不眠になりやすい」と話すのは、日本代表選手をはじめ、様々な競技のアスリートに睡眠の指導を行う白濱龍太郎先生。実際、10代から睡眠に悩みを抱えている人が以前より増えているそうです。
「忙しい現代社会では、仕事と競技を両立する社会人選手だけでなく、学生選手も授業と部活動、そして塾と目まぐるしい日々を送っています。毎日、こなさなくてはいけないタスクが山積みとなり、結果、時間が足りず、睡眠時間が減少しがちです。
また、心身ともに発達途上の年代から、『結果を出さなければならない』『試合でミスはできない』といったプレッシャーや、周囲の期待を背負う環境の影響も大きい。
その他にも、指導者やチームメート、先輩との人間関係の悩みやオーバートレーニング、他選手と自分を比べてしまうなども、『眠れない』『寝ているのに疲れが取れない』といった、睡眠の悩みの要因に。特に競技レベルの高い選手ほど、リスキーな環境下にあります」(白濱先生)
睡眠不足や睡眠の質が低下すると、運動パフォーマンスに悪影響を及ぼすことは、数々の研究でも報告されています。
「代表的な研究の1つに、スタンフォード睡眠障害クリニックおよび研究所が、男子バレーボールチームに所属する大学生に対して行ったものがあります。この研究では最低10時間を目標にできるだけ睡眠をとった場合、普段よりもスピード、シュートの成功率も上がった、という結果が報告されています。つまり、しっかり眠ったほうが、集中力がアップし、プレーの質も高まる、ということです。
その他にも、睡眠不足が続くと、筋量アップや骨を強くすることに働く、テストステロンというホルモンの分泌が低下。トレーニングを続けても思うように筋力アップできない、少ない負荷ですぐ疲れを感じる、などの症状が現れます」
スポーツ選手の睡眠障害はわずか数週間で悪化する傾向
また、睡眠はメンタルにも影響。睡眠不足や寝ても疲れが取れないと、練習や試合で力が発揮できず、その悩みからますます眠れなくなる……という負のループに突入。
「一般的に睡眠障害は2、3か月にわたり進行しますが、スポーツ選手の場合、数週間で悪化する傾向が見られます。そのため、問題が大きくなってから相談に来られる選手が多い印象です。
運動量が多いアスリートや運動部の学生は、とにかく心身の回復のため、毎日、睡眠時間を十分に取ること、そして深く眠る――つまり睡眠の質を上げることが大切。そのためには睡眠時間や生活パターン、そして就寝前の行動を見直すと効果的です」
「眠れない」といっても、例えば試合前、緊張で寝られなくても、試合後、熟睡できれば大丈夫。問題は長期間、睡眠が不安定になること、と白濱先生。次回は、予防や改善のための具体的な方法、そしてナショナルチームで実践していることについて伺います。
【CHECK】
こんな症状が現れたら……もしかして睡眠不足かも?
★十分な時間、寝ているのに寝足りない気がする
★横になってもなかなか寝付けない
★授業や仕事に集中出来ない
★日中に眠気を感じる
★不安や焦りを感じやすくなった
★練習や試合時の集中力にかける
★体が重い、息切れをするようになった
★食欲が落ちた
★体重が減った ……など。
教えてくれたのは…

■白濱 龍太郎 / Ryutaro Shirahama
医師、医学博士、産業医、日本睡眠学会認定医。筑波大学医学群医学類卒業、東京医科歯科大学大学院東郷呼吸上顎修了。東京医科歯科大学医学部付属病院等を経て、13年、新横浜にて睡眠専門クリニック「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立。慶應義塾大学特任准教授、国立大学法人福井大学客員准教授、武蔵野学院大学客員教授、日本オリンピック委員会強化スタッフ、ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員などを歴任。『「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK』(主婦の友社)、『体温を上げて睡眠の質を高める!70歳からの「寝る前30秒ストレッチ」』(PHP研究所)など著書多数。
(W-ANS ACADEMY編集部)
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