インタビュー

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インタビュー

「自分がそこで負けないこと」なでしこジャパンで立つ“夢舞台”へ秘める闘志

ワールドカップ初出場の清水選手が抱く思いとは…

 6月7日から7月7日までフランスで開催される「FIFA女子ワールドカップフランス2019」。高倉麻子監督率いるなでしこジャパンは、2大会ぶりとなる優勝を目指して強化を重ねてきた。最終メンバー23人のうち、17人がワールドカップ初出場となるフレッシュな顔ぶれとなったが、その中でも注目を浴びているのが、右サイドを担うDF清水梨紗選手(日テレ・ベレーザ)だ。2017年の初選出以来、なでしこジャパンで活躍する清水選手の目に、ワールドカップはどのような舞台として映っているのだろうか。

「夢ですね。テレビで見る舞台で、最初は自分が出られるとは思っていませんでした。2015年に準優勝したカナダ大会、2011年に優勝したドイツ大会は家で観ていましたが、ワールドカップの舞台に自分が立っている姿を想像するなんて全然できなかったんです。だから、今は不思議な気持ちもありますね」

 姉の影響を受けてサッカーを始めた小学校1年生の頃は、別世界のように感じていたワールドカップ。世界最高峰を決めるステージへの出場を現実の目標として意識し始めたのは、ごく最近のことだったという。

「実際にワールドカップ出場を意識し始めたのは、なでしこジャパンに入ってからなんです。なでしこジャパンに初選出されるまでは、ワールドカップ出場よりも代表入りしたい気持ちの方が大きくて。なでしこジャパンに選ばれてから、ようやく形ある目標になってきました」

 それまでもワールドカップを意識したことがなかったわけではない。小学校の頃からサッカーの才能が光った清水選手は、12歳で日テレ・ベレーザの下部組織である日テレ・メニーナに入団。翌年、日本サッカー協会(JFA)エリートプログラム女子U-14に参加したのをきっかけ手始めに、そこからアンダー世代の代表チームではおなじみの存在となった。だが、国士舘大学在学中の2016年、パプアニューギニアで開催された「FIFA U-20女子ワールドカップ」には怪我で出場できず、「いつかワールドカップに出たいという気持ちが芽生えました」と振り返る。

経験と若さが共存するなでしこジャパン「フレッシュさというアクセントを」

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 おっとりとした口調と柔和な雰囲気、そして周りの選手より小柄な体つきから想像しがたいが、一度ピッチに立てばアグレッシブなプレーが持ち味。90分を通して落ちないスタミナには定評があり、豊富な運動量でなでしこジャパンを勢いづける。なでしこジャパン入りした時に驚かされたのが海外選手の大きさだったという。アンダー世代では互いに身体が出来上がっていなかったが、海外選手との体格差を感じやすいポジションであるため、年齢制限のないフル代表になると「身体が出来上がっていて、スピードもあるし、体力もある。アンダー世代との差がすごく激しくて、最初はベンチから見ているだけでも圧倒される迫力がありました」と語った。

 だが、そこで怖じ気づくような性格ではない。「サイドバックは相手と1対1になることが多いポジション。しかも、自分が対峙するサイドハーフには色々な国がキープレーヤーを置いてくるので、自分がそこで負けないことでチームが楽になる。その点にはこだわっていきたいですね」。目の前に立ちはだかる壁が大きければ大きいほど、心の中に宿る闘志が燃え上がる。

 試合前はいつも緊張するというが、開始を告げるホイッスルが鳴った瞬間、硬さはどこかに吹き飛んでしまう。「ワールドカップでも緊張するとは思うんですけど、誰もが経験できる舞台ではないですし、4年に一度しかない。自分のできることを精一杯やるだけ。今は楽しみでしかないですね」と言い切れるのも、ワールドカップに向けて合宿を重ねたなでしこジャパンに、チームとしての絆が生まれているからだろう。

 今回のメンバーには、ワールドカップ4大会連続出場となる阪口夢穂(みずほ)選手や鮫島彩選手をはじめ、2011年ドイツ大会で世界一を経験したメンバーが5人選出された。清水選手が所属する日テレ・ベレーザからは、チーム最年少19歳の遠藤純選手を含む10人が代表入り。経験と若さを合わせ持つチーム編成の中では「フレッシュさを出していければ」と語る。

「経験がない分、怖いもの知らずなので(笑)。何度も出場経験のある先輩方は、その経験がすごく生きてくるはず。なので、初出場の自分たちはそこにフレッシュさというアクセントをつけられればいいと思います」

 メンバーの中には、幼い頃からアンダー世代の階段をともに上がり続けた仲間もいる。2010年のJFAエリートプログラム女子U-14に参加していたメンバーからは、清水選手の他にも平尾知佳選手、籾木結花選手、長谷川唯選手の4人がなでしこジャパンに入った。JFAエリートプログラムをはじめとする将来有望な選手の発掘・育成事業の実施にはスポーツくじ(toto・BIG)の収益による助成金が役立てられている。スポーツくじの助成金はその他にも、地域のグラウンドの芝生化や地域で開催される大会の開催など、女子サッカーの競技の普及・発展をサポートしている。

ワールドカップにかけるもう1つの想い「日本で女子サッカーが盛り上がるきっかけに」

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 なでしこジャパンは、直近のワールドカップ2大会で優勝(2011年ドイツ大会)、準優勝(2015年カナダ大会)と輝かしい成績を収めてきた。それだけに今大会でも好成績が期待され、選手が感じるプレッシャーもあるだろう。もちろん、勝利を積み重ね、最後は世界の頂点に立つことを目標としているが、清水選手にはもう1つ、なでしこジャパンのプレーを通じて伝えたい想いがある。

「前回、前々回のワールドカップの後、女子サッカーがすごく盛り上がりました。だから、自分たちも優勝して、日本で女子サッカーが盛り上がるきっかけになりたいんです。今、なでしこリーグでプレーしていますが、なかなか観客が増えないですし、サッカーをする女の子もあまり増えていないように感じています。なので、自分やなでしこジャパンが活躍することで、一人でも女子サッカーに興味を持つ人が増え、サッカーを始めてみたいと思う女の子が増えればいいなと思っています」

 ここまでサッカーに対して熱い想いを抱けるのも、その根本には「サッカーが好き」という気持ちがあるからだ。

「普通に、シンプルにすごくサッカーが好きで楽しい。もっともっと上手くなりたいという気持ちがあるので、高校生や大学生の時に友達と遊ぶことも楽しみではありましたけど、それよりもサッカーが勝っていましたね。だから、学校の友達が遊びに行くのを見ても、あまりうらやましいと思ったことがないんです」

 サッカーに魅せられた清水選手。これから何度も大舞台を経験することになるだろうが、先を見過ぎずに一つひとつ前に進んでいくつもりだ。

「よく聞かれるのですが、数年後の自分がどういう風になっているか想像がつかないんです。今年はワールドカップがあって、来年にはオリンピックがある。身近なところに目標を立てながら、一つひとつクリアしていく方が自分に合っているのかなって思います」

「まずはワールドカップ優勝が目標ですね」と聞くと、歯切れ良く「はい!」と笑顔を見せた清水選手。なでしこジャパンがフランスで見せる活躍で、日本を興奮の渦に巻き込むことを期待したい。

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清水 梨紗しみず りさ

 1996年6月15日、兵庫県生まれ。神奈川県立元石川高等学校から国士館大学に進学。2歳上の姉の影響で小学校1年生からサッカーを始める。小学校2年生で神奈川県横浜市に転居した後もサッカーを続け、2009年に日テレ・ベレーザの下部組織、日テレ・メニーナに入団。翌年にJFAエリートプログラム女子U-14に参加すると、2011年にはU-16日本女子代表としてAFC U-16女子選手権大会で優勝した。2012年のU-17女子ワールドカップではベスト8進出。高校2年生の2013年にトップチームである日テレ・ベレーザに昇格し、攻撃的なサイドバックとしてチームを支える。なでしこジャパンには2017年に初選出。通算23試合出場のうち18試合で先発出場(2019年6月10 日現在)するなど、チームの大きな戦力として活躍している。

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