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「ダメなところ」を気にする日本の子供たち 指導者に必要な長所を伸ばす“褒め方”

リノ氏は指導者の仕事としてミスの原因を検証することを挙げた【写真:編集部】
リノ氏は指導者の仕事としてミスの原因を検証することを挙げた【写真:編集部】

子供たちには「どんどんチャレンジさせて失敗をさせるべき」

――日本ではミスをすると怒鳴られるので、早い時期からチャレンジをしなくなるという声もあります。

リノ「指導者はトレーニングで、どんどんチャレンジさせて失敗をさせるべきです。選手たちは失敗しなければいけないし、指導者はそれを修正できなければいけない。例えば、身体をぶつけ合うのが苦手な選手には、トレーニングでチャレンジさせておく必要がある」

――吉住さんは選手時代、監督に怒鳴られてプレーが怖くなることはありませんでしたか?

吉住「ありました。僕はDFだったんですが、コントロールするのが怖くなりました。簡単なのはダイレクトで蹴っておくことなんですが、フリーの時に蹴ってしまうと怒られる。でもコントロールして失敗すると、もっと怒られる」

リノ「指導者はミスの原因を検証しなければならない。パスが悪ければコントロールが難しいし、後ろに相手がいればさらに難しくなる。つまりその状況ではコントロールを失敗した側より、パスを出した側に原因がある。指導者は、こうして観客には分かりにくいことをしっかりと見て修正しなければいけない」

吉住「日本の子供たちは『僕のダメなところはなんですか?』と、自分の欠点を聞くんですよ。でもスペインの子は違う。『オレはこれができるから、このポジションがいいんじゃないの?』『オレはシュートが上手いからFWのほうがいいだろ』と平気で言ってくる。日本の子に『何が得意なの?』と聞いても返ってこないんですよ。だから試合中に『どれだけ得意なプレーができるか考えようよ。それができなかったら反省しようよ』と伝えます」

――吉住さんは、怒られる怖さをどのように克服したのですか?

「上手くいった時は褒めてもらえたんです。いつも怒っている人が、ちょっとでも褒めると凄く自信がつく。ただそれは僕が試合に出ていたからこそで、出られなかった子には恐怖心しか残らないかもしれません。

 だからスペインへ行ってからは、褒め方に強弱をつけるようになりました。その日のテーマがパスなら、コントロールミスには言及しないし、上手くいっても『いいぞ』程度に止める。でも上手いパスが出た時には、もう宝くじが当たったくらいに『凄いなあ、おまえ!』って。スペイン人の指導者は、それが自然にできているんですよね」(文中敬称略)

(第4回へ続く)

[指導者プロフィール]

■リノ・ロベルト
1972年4月26日生まれ。UEFA(欧州サッカー連盟)スペイン連盟の指導者資格を持ち、2002年からアトレチコ・マドリードでカンテラの指導に携わり、2017年に来日。埼玉県のジュニアユースチームでU-15監督を務めた。スペイン連盟からは、主に指導者対象の戦略セミナーを任された。

■吉住貴士
1986年12月8日生まれ。国見高校時代に全国制覇し、鹿屋体育大学では主将を務める。大学卒業後は長崎総合科学大学附属高校のコーチを6年間務めたが、その後スペインに渡り現地のチームで4年間指導。現在はRCDエスパニョールジャパンアカデミーの責任者。

[セレクション開催]
今回の対談に登場したリノ・ロベルト氏がコーチを務める「Professional Training Center(プロトレセン)」が、小学新2年生(U-8)、小学新3年生(U-9)を対象に選考会を開催する。詳細や応募方法は下記URLへ。
https://note.mu/jpn_academy2019/n/n5d27de4a386d

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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