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日本スポーツ界が断ち切るべき“負の連鎖” 選手を追い込む「勝利至上主義」と美談

現場の指導者が勝利至上主義に走れば、選手の未来が犠牲になる

 先日行われた全日本実業団対抗女子駅伝の予選会で、脛骨を骨折したランナーが四つん這いになりながらタスキを渡した。だがこういうケースは今回が初めてではなく、過去に箱根駅伝などでも脱水症状で意識を失った選手がレースを続けようとして、そのたびに多くのメディアは美談として扱ってきた。

 サッカーやラグビーなどボールを使う団体競技では交代が認められるようになったが、依然として駅伝には途中交代のルールがない。走り出した選手にアクシデントがあっても、チームメイトのために多大な責任を背負い込むから、自分の選手生命の危険を無視して走り抜こうとする。それを見て多くの沿道のファンも「頑張れ」と声をかけるのだ。

 サッカーでも、とりわけ高体連の大会などでは、故障を押してでもプレーする傾向から脱却できていない。まして駅伝は、長距離やマラソンの強化が発祥の目的なのに、企業や学校が入れ込み過ぎて、目標へと変わってしまっている。

 メディアに煽られた人気に後押しされ、現場の指導者が勝利至上主義に走り、選手たちの未来が犠牲になる――。そろそろ日本のスポーツ界も、このサイクルを断ち切るべき時期に来ているはずだ。

(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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