インタビュー

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「不可能とは可能性だ」パラノルディック界エースを支えた色紙の言葉

パラノルディックスキー 川除大輝選手

「4年後は自分も表彰台に…」転機となった平昌パラリンピックで見た光景

 4年前の平昌パラリンピック。現役高校生ながらクロスカントリースキー4種目に出場した川除大輝選手は、自身は10位に終わった男子クラシカル(1)10キロ(立位)の表彰式で、目映いばかりに光る金メダルを持った新田佳浩選手の姿を見て誓った。

「4年後は自分も表彰台に立ちたい。そう思ったところから、北京パラリンピックに向けての4年間が始まった。あそこで気持ちの切り替えができたことが一番のポイントでした」

 高校生ならではの若さと勢いを持って臨んだ平昌パラリンピックは、チーム戦の混合10キロリレーこそ4位に入賞したが、個人戦はスプリント(2)・クラシカル(立位)の9位が最高。「目標だった(個人での)入賞ができず、勢いだけではダメなんだと考えました」と振り返る。

 2022年の北京パラリンピックに向け、海外選手の動画を参考に走行フォームを練り直したり、練習時には自身の動画を撮影して改善ポイントを検討しながら、基礎から固め直した。2019年には大学に進学し、地元・富山を離れて東京で寮生活をスタート。環境の変化でコンディションの維持が難しく、思い通りの結果が出ないこともあったが、「表彰台に立つ」という想いがブレることはなかった。

「想いを上手く繋げられたから、大学で調子を落としてもやる気を出せたし、良い経験として捉えることができました。成績がついてこない時期もあったけど、どうしたら調子が落ちるのかは分かった。自分を知るという意味で大きな成長だったと思います」

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 2022年3月7日。北京パラリンピックで行われたクロスカントリー男子クラシカル20キロ(立位)で金メダルを獲得し、表彰台の上で爽やかな笑顔を浮かべたのは川除選手だった。レース開始早々にトップに立つと独走状態をキープ。10キロ地点、20キロ地点と距離を伸ばすにつれ、2位との差はどんどん開き、最後は1分30秒以上の大差をつけての圧勝だった。

 レース中盤から優勝を確信できるタイム差ではあったが、「ここまでのタイム差がついたレースは今までなかったですが、本当に気は緩められませんでした」と最後まで奢らず。世界の頂点に立ってもなお、「(レース前は)メダルを獲れるかどうかという立ち位置での金メダルは、今までやってきたことに対する自信に繋がりました」と謙虚な姿勢を貫いたままだ。

 長年パラノルディックスキーを牽引してきた新田選手が北京パラリンピックを節目に事実上の「選手兼任コーチ」となったこともあり、「新エース」「後継者」と呼ばれる機会も増えたが、「ただただ結果を残したいという想いだけ」と競技と向き合う姿勢は変わらない。だから、「エース」と呼ばれて「調子に乗ることもないし、プレッシャーにもならないです」と、心はフラットなままだ。

(1)専用の圧雪車で作られた2本の溝(シュプール)の中を滑り、スキーを左右に平行 に保ちながら、交互または左右同時に前進する走法。

(2)1レースの滑走距離は1.5キロ前後、時間にして2分半ほどの短時間で勝負が決まる種目。

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