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ラグビー日本代表は進化しているか 強豪に連敗も欧州遠征で見えた“2023年への光”

日本代表の欧州遠征が2戦2敗で終わった。新型コロナウイルスのパンデミックで、2019年ワールドカップ(W杯)以来の対外試合には、国内のファンはもとより世界のラグビー関係者から注目されていたが、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ、そして世界ランク4位のアイルランドというトップクラスの強豪に敗れたとはいえ、互角に戦えるポテンシャルは証明した。コロナ感染の影響で、いまだに代表強化もフルスロットルにならない苦境の中で、新生日本代表が今回の遠征で見せた2年後のW杯フランス大会へ向けた可能性、そして目標に掲げる前回大会のベスト8越えのための課題を検証する。(文=吉田宏)

ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦でボールを持って走る松島幸太朗(左)【写真:Getty Images】
ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦でボールを持って走る松島幸太朗(左)【写真:Getty Images】

吉田宏記者のコラム、2戦2敗に終わった欧州遠征で見えたものとは

 日本代表の欧州遠征が2戦2敗で終わった。新型コロナウイルスのパンデミックで、2019年ワールドカップ(W杯)以来の対外試合には、国内のファンはもとより世界のラグビー関係者から注目されていたが、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ、そして世界ランク4位のアイルランドというトップクラスの強豪に敗れたとはいえ、互角に戦えるポテンシャルは証明した。コロナ感染の影響で、いまだに代表強化もフルスロットルにならない苦境の中で、新生日本代表が今回の遠征で見せた2年後のW杯フランス大会へ向けた可能性、そして目標に掲げる前回大会のベスト8越えのための課題を検証する。(文=吉田宏)

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 新生ジャパンのパンデミック後初の遠征は2戦2敗で幕を閉じた。

 北半球のオールスター軍団ライオンズに10-28、そのライオンズに主力メンバーが招集されていたとはいえ世界ランク4位のアイルランドには31-39。現地報道では、日本代表らしくボールを積極的に動かし、スピードで勝負するスタイルが称えられた一方で、その敗戦を「錆びついていた」とも報じられた。それも注目度の高さからのことだろう。過去には勝敗の対象とは見られなかった「お客さん」だったチームが、15年W杯での南アフリカ撃破、そして19年の躍進で、本当の対戦相手として扱われたことが、チームの進化を物語っている。

 6日には、帰国して隔離期間に置かれていた藤井雄一郎ナショナルチームディレクターがオンライン会見を行い、今回の遠征を総括した。

「負けはしたが、チームは尻上がりにいい方向に向かっていったと思う。アウェーの試合、コロナの隔離の中で選手はストレスを強いられ、ホテルの中から1歩も出られなかった。その中で選手、コーチとも集中力を切らさずにワンチームを保って、最後まで戦ってくれた。パフォーマンス的には本当にいい試合ができたと思う」

 アイルランドを始め各国が昨年も活動を続ける中で、ワールドカップ日本大会後は全ての活動が見送られ、ようやく動き出したチームが世界の強豪と渡り合えた安堵感と手応えは大きかったはずだ。厳しい制約下でも強化が再開されたことで、ようやく23年への1歩を踏み出し、強化の道筋が見えてきた。

 今回の遠征のデータを見ると、善戦の中で敗れるべき数値もしっかりと残されている。同じアイルランドに勝った19年W杯では、日本のポゼッション(ボール保持率)が51%だったのに対して今回は45%。テリトリー(地域支配率)も48%から38%に下がっている。前半にトライを奪われた局面や、後半の試合展開では、アイルランドが自分たちの強みであるフィジカルの強さ、体の大きさを生かして、しっかりとコンタクトをして重さとパワーを前面に出したタイトなプレーを挑んでくると、対応に苦しんでいたのが印象的だ。

 それでも、最終的には8点差と食らいつけたのは、アイルランドが過剰なまでに日本対策を講じていたことが要因だろう。特に前半のアイルランドは、防御面で自分たちの強みよりも、日本とどう戦うかを意識していた印象だ。両チームのブレークダウンの攻防を見ると、アイルランド防御が早めに密集参加を見切って次のライン防御に備える場面が多くみられた。スピードとアジリティーの高い日本のアタックを封じ込めるために、防御ラインにより多くの人数をかけようとしていたのだろう。

 だが、この防御の考え方は、日本代表にとっては恩恵にもなった。日本がアイルランド相手に最も警戒していたのは、体の大きさやパワーで重圧をかけられること。だが、この接点のところで、競り合い、重圧をかけるシーンが特に前半は少なかったことで、日本は序盤から自分たちが求める速いテンポで密集からの球出しが出来ていた。1週間前のライオンズ戦では、序盤の密集戦で重圧をかけられて、球出しがスローダウンされていたこととは対照的だった。

 もちろん、この状況は、日本のボールキャリアとサポート選手が、1週間前のライオンズ戦よりも高い意識でラックに持ち込もう、ボールを生かそうとしたこと、初先発したSH齋藤直人(サントリーサンゴリアス)が、持ち味の早い集散と巧みなボール捌きでBKへ積極的にパスできたことも影響しているが、映像を通じて強く違和感を覚えたのは、アイルランドが“よそ行き”の戦い方をしていたことだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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