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偉大な父と比べられる君へ 「金メダリストの息子」と言われた体操・塚原直也の助言

「3世代五輪金メダリスト」の可能性がある3人の息子への思いとは

 質疑応答を含め、高校生に成長のヒントを存分に与えた1時間。今回のインタビューを実施したのは、その授業後のこと。

 改めて、競技人生における父への感謝を問うと「日本で最高の練習場を用意してくれたし、コーチも体操で金メダルを一番獲っているアンドレアノフコーチを用意してくれた。ほかは何も言わない。粋というか、見習いたい。自分も父親としてそういう教育できたらいいと思います」と語った。

 一方で、かつての自身のように偉大な父を持ち、その重圧を背負いながらスポーツをしている子供は少なくない。「父が厳しいと、子供は大変ですよね」と共感し、アドバイスを送る。

「競技を始める頃は自分の意思もないくらいなので、父が右に行けと言えば右に行くし、左に行けと言えば左に行く。言われたことを忠実にやろうとする。大切な相手と自分という人間のバランスは難しいと思うけど、父親であってもタイプは違うと思うこともあるので、(父親と自分を)分けて考えるように努力をするときっといいと思います」

 実際、43歳になった塚原さん自身、今は3児の父だ。6歳、4歳、1歳、いずれも男の子。体操を習い始めているという。「もし本格的に体操をやるというなら、全力で応援したい」と、できる限りのサポートをする心づもりだ。そうなると「3世代で五輪金メダリスト」という期待も当然膨らむが、その点については冷静に受け止めている。

「そこを期待したら、可哀想だと思うので。遊びでいいからやってみるくらいでいいと思っています。父のやり方で自分は成功しているので、同じように接しています。自分の話は子供たちに全然しない。そこは父と同じように、あまり意識させないように。子供のやりたいようにやってくれたら、サポートだけはしっかりしてあげたいと思います」

 自分と同じように競技で成功してほしいと願いながら、指導している父もいることだろう。「2世選手」として大成し、今は親になった立場として「あまり期待しすぎない方がいいのかなと思います」と塚原さんは呼びかける。

「子供の能力もあるし、性格もある。一概には言えないけど、強いて言うなら過度に期待しすぎると、本人の判断が鈍ってしまうと思います。焦って怪我するとか、逆にやる気をなくしてしまうとか、そういうことも起きてしまう。本人に(期待を)丸投げするのではなく、必要最低限のサポートはして、本人を信頼して任せてみることが一番の成功になると、僕自身は思います」

 偉大な父を持つプレッシャーを背負いながら、アテネ五輪の団体総合で優勝に貢献した塚原さん。当時は「おめでとう」と言われたくらいで、親子2代で五輪金メダルを獲得したことについては、特に何の言葉もなかった。ただ、帰国後に家族で呼ばれた祝勝パーティーで挨拶する際、父が涙する姿を見て「ああ、親孝行できたんだなあ」と実感したという。

 もちろん「2世選手の指導問題」にこれという正解はない。しかし、子供は親の所有物ではなく、夢の描き方は本人の意思は委ねられるべきものだろう。「日本初のオリンピック親子金メダリスト」となった塚原さんの体験は、それを教えてくれる。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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