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学校に“スポーツを託した”日本の失敗 「遊びと教育」が一緒になり常態化したパワハラ指導

昭和が過ぎ去り令和の時代を迎えても、日本では部活や少年チームの指導者たちのパワハラ問題が矢継ぎ早に報じられてくる。幸野健一が自ら幸せなスポーツクラブを目指し「FC市川GUNNERS」を起ち上げたのも、こうした日本の旧態依然としたスポーツ事情を変えたいと考えたからだった。

幸野健一は日本の旧態依然としたスポーツ事情を変えたいと考えていた【写真:編集部】
幸野健一は日本の旧態依然としたスポーツ事情を変えたいと考えていた【写真:編集部】

【幸野健一が挑む日本のスポーツ文化改革|第2回】怒鳴り散らすコーチは「自分の無能ぶりを責任転嫁しているに過ぎない」

 昭和が過ぎ去り令和の時代を迎えても、日本では部活や少年チームの指導者たちのパワハラ問題が矢継ぎ早に報じられてくる。幸野健一が自ら幸せなスポーツクラブを目指し「FC市川GUNNERS」を起ち上げたのも、こうした日本の旧態依然としたスポーツ事情を変えたいと考えたからだった。

「例えば大人が1万円を払ってスポーツジムに行ったとします。そこでインストラクターに『おまえなんか練習させねえぞ』と言われたら『ふざけるな!』と辞めますよね。ところが日本のスポーツの現場では、それが公然と行われている。親からお金を頂いておいて、その子供に暴言を吐き、『そんなプレーをしていたら試合に出さないぞ』と交代を命じたりしているわけです。時代錯誤も甚だしいのに、まだそれを当たり前だと思っている指導者がいる」

 確かにかつては自動車教習所の教官や警察官など居丈高が罷り通る職業がいくつかあったが、今では軒並み仕事に臨む姿勢も改められている。そう考えれば、スポーツ界は日本でも最も意識改革が立ち遅れているのかもしれない。

「僕はイングランドで子供たちに指導をしたこともあるんですが、トレーニングの内容を上手く説明できなかったら、『そんなんじゃ納得できない』と全員帰ってしまいました。欧州では言葉で説得するスキルがなければ、子供たちにも相手にされない。

 日本ではパワハラをした指導者たちが、『理不尽は社会に出れば往々にしてあることだから役に立つ』などと言い訳をしていますが、それは自分の無能ぶりを子供たちに責任転嫁しているに過ぎない。試合中に怒鳴り散らしているコーチは、トレーニングで選手を言葉で修正する能力がないことを自ら大声で知らせているだけです」

 それにしてもなぜ日本だけが、こんな状況に陥ったのか。幸野も自ら調べてみた。

「その原因は、約70年前に当時の政府が学校にグラウンド、体育館、プールなどを作らせて、ドイツが実践していた軍事教練をベースにした体育をさせたことです。本来スポーツはラテン語の“Deportare”に由来していて、気分転換、つまり遊びを意味している。ところが日本では学校にスポーツを入れてしまったために、本来相容れない遊びと教育が一緒にされてしまった。

 だからそこに先輩後輩の縦関係が生まれ、成績や進路の権限も握る先生が、体罰を伴って朝練習や自主練習を課し、夏休みも練習に明け暮れるようになった。それを日本の人たちはずっと当たり前のことだと受け止めてきたわけですが、僕にとっては物凄い違和感でした」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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