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「3.11」前日、大船渡の小さなプールで… 伊藤華英さんが続ける“復興支援のカタチ”

伊藤さんは今回で指導は3年目となる【写真:村上正広】
伊藤さんは今回で指導は3年目となる【写真:村上正広】

タイムを縮めるより大切な“生きる力”「10代のうちにたくさん挑戦、失敗を」

 すると、驚きの結果が続々。半年で50メートルを7秒縮める子供も出るなど、頑張りが結果となって表れた。これには、伊藤さんも「よく頑張ったね」と褒め、大喜び。その度に子供たちは照れくさそうにしながら、笑みを浮かべた。緊張の時間を終えると、伊藤さんも参加したリレー対決を実施。五輪に2度出場した泳ぎを披露して白熱のレースを繰り広げ、子供たちと一緒に過ごした充実の時間を締めくくった。

 成果発表終了後、もう一つのイベントが待っていた。修了証授与式。1年間を振り返って発表していく。「水泳はもちろん、勉強、部活に向上心をもって取り組めるようになった」「できないことがだんだんできるようになり、自信がついた」「学校を休まず、体力がついた」と思い思いに自分の言葉で語ると、伊藤さんはそんな様子を温かい目で見守っていた。そして、全員を聞き終えると、1年間を総括して言葉を贈った。

「1年間で3回会いに来たけど、毎回しっかりと頑張っていて、動画で私が指導する言葉もよく聞けるようになりました。親御さん、先生、いろんな人の言葉を聞けるようになり、自分の意見を持てるようになったと思います。1年後、3年後、5年後、このプログラムを通じてどんな人間になりたいかも学べたんじゃないかな。ボーッとしていても1年間はあっという間。だから一生懸命に10代のうちにたくさん失敗してください。失敗するのは挑戦しているから。これからもたくさん挑戦していってください」

 伊藤さんにとって、実は指導は3年目。毎年、子供たちの成長を実感してきたが、大事なことはタイムを縮めることだけじゃないと伝えてきた。自分で目標を立て、考え、行動し、努力する。過程において成功すれば、失敗することもある。そうした経験は水泳のみならず、“生きる力”となり、日頃の勉強、部活、自分の「夢」実現を後押ししてくれる。それは、このプログラムがスポーツを通して込めた一番の願いと重なる。

 イベント翌日は、ちょうど8回目の「3.11」だった。参加している子供たちは、あの日、生まれる前の子供もいれば、4歳だった子供もいて、記憶の残り方は様々。しかし、確かなことは、今なお津波の傷跡が残る街の復興と歩調を合わせるようにして、毎年、背丈は伸び、逞しさを増し、成長してきたことだ。そんな大船渡の街と1人のオリンピアンが結ばれ、思いは距離を超え、つながってきた。そして、これからも――。

「じゃあ、またね」。伊藤さんは笑顔とともに、大船渡を後にした。

(THE ANSWER編集部)

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