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「蹴るな、走るな、歩け!」 高校サッカー異端の名将、王国に憧れ極めた個人技スタイル

「蹴るな、走るな、歩け!」――井田勝通(元静岡学園高校監督)

話題を呼んだ静岡学園の“走らない”テクニカルなサッカー【写真:Getty Images】
話題を呼んだ静岡学園の“走らない”テクニカルなサッカー【写真:Getty Images】

1976年度決勝…静岡学園の“走らない”テクニカルなサッカーに対戦相手も驚きの声

「蹴るな、走るな、歩け!」――井田勝通(元静岡学園高校監督)

 全国高校サッカー選手権が首都圏開催に変わって、2017年度が42回目になる。それまで大阪開催では、やっと片側のスタンドが埋まるかどうかだったそうだが、1976年度は決勝戦の舞台が東京・国立競技場になり、いきなり満員の大観衆を集めた。

 大会を成功に導いた立役者は、最後に好対照でスリリングな試合を展開した2校。特に、初出場の静岡学園(静岡)のプレーぶりは斬新だった。

 1970年メキシコ・ワールドカップで優勝したブラジル代表に感銘を受けた井田勝通監督が、「あんなサッカーを日本の子供たちにもやらせてみたい」と、徹底してテクニックを磨かせ、ゆっくりとしたボール支配にこだわった。

 迎え撃ったのは名門・浦和南(埼玉)。大阪最後の大会も田嶋幸三(現・日本サッカー協会会長)を擁して優勝しており、スピードとテクニックを融合したオーソドックスなスタイルで連覇を目指していた。

 大会が幕を開けると、多彩なテクニックを駆使してボールを運ぶ静岡学園に、多くの選手たちが目を見張った。夏のインターハイを制していた帝京のゲームメーカーだった宮内聡も、足裏でボールを扱うテクニックなどとともに「いったい、こいつらどれだけ走らないんだ!」と驚きの声を挙げたという。

 決勝戦は序盤から浦和南が飛ばしてゴールを重ねた。浦和南を率いる松本暁司監督は、選手たちに指示した。

「いくらなんでも相手は遅すぎる。スピードで圧倒してしまうんだ」

 その通り、早々と3点を先行。初めての大観衆で過緊張の静岡学園は、ようやく1点を返して前半を折り返した。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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