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「大事なのは日々の積み重ね」 元五輪選手が“走り”を通じ、宮古の子供達へ伝えたい事

秋田県出身の伊藤さんは体を冷やさないことの重要性を伝えた【写真:編集部】
秋田県出身の伊藤さんは体を冷やさないことの重要性を伝えた【写真:編集部】

前足が大事とスタート時の構えを伝授 後ろ足は浮かせる!?

 さっそく伊藤さんによるクリニックがスタート。トラックのコンディションと寒さを考慮して室内でのトレーニングに変更になったが、まずはウォーミングアップで体を温めた。伊藤さんが準備した少し早いリズム音に合わせて腕や足を動かしていくトレーニングだが、「腕を振るときに体から離れると力が入らないので、腕を曲げて体の近くで腕を振ってください」とポイントを説明。リズムに合わせて10秒間の腕振りを行うと、次は腿上げ。同様に10秒間、リズムに合わせて腰の高さまで足を上げる腿上げを行った。「3、2、1、終了! どうですか? 今、寒い人~? 暖まってきた?」と声を掛けると、子供たちのマスクからは白い湯気が立っているのが画面越しに窺えた。

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 伊藤さんは子供たちと同じ東北の秋田県出身。「寒い地域に住んでいるので、体が冷えないようにしてください。通常の筋肉は36度ぐらいなのですが、これが39度ぐらいになると、測定記録が16%良くなるというデータがあります。反対に低く(寒く)なると遅くなります。このあと50メートル走を測定しますが、できるだけ体は温めたままの状態で測定に臨んでください。これは試合の時も同じです」と体を冷やさないことの重要性を伝えた。

 ウォーミングアップを終えたところで、走りのトレーニング。片足で5歩けんけんを行ってからのダッシュと、5メートルスキップしてからのダッシュを行った。「自分の足で遠くに行こうとしなくていいです。体の真下に足を置いて、真っすぐな姿勢を前に移動させてあげる意識でけんけんしてみてください」「スキップも体重を前にかけて、勝手に前に進んでいくイメージで」と伝えると、子供たちはすぐに対応した。

 次にチェックしたのが、スタートダッシュの構え。「ヨーイ、ドン!って言われて、出る直前の構えをしてみてください」と伊藤さん。おのおのが構えを行い、それを見た伊藤さんが「構えは前足が大事です。後ろ足を浮かせても、前足だけで体重を支えられる構えをしてください」と伝えると、子供たちは少し驚いたような表情を浮かべていたが、その後、外で行った50メートルのタイム計測では全員が伊藤さんの教えを取り入れた構えからきれいなダッシュを見せていた。

 室内に移動して行われたのが、この日のメインとなる「夢宣言」だ。それぞれに渡された「夢達成ノート」に、子供たちは「私の将来の夢」「未来の私たちの街をどうしたいのか」「3か月後の約束」を記した。「3か月後の約束」では、「長距離のタイムを縮めたい」「50メートル走のタイムを0.1秒縮めたい」「0.5秒縮めたい」といった目標を宣言。今回は3か月と短い期間だが、伊藤さんは「昨年に続いて参加してくれたありがとう。昨年より走りが良くなっている感じがしました」「走りを良くしていくと長距離のタイムも良くなっていくことがあるので、まずは走りを良くしていこう」「一緒に頑張っていきましょう!」と一人ひとりに声を掛け、子供たちの目標に寄り添った。その後、オンライン上で2ショット写真も撮影。初めはぎこちなかった子供たちに笑顔が溢れた。

 質問コーナーでは、「選手になって良かったこと、つらかったことは?」という、伊藤さんをして「これを話したら時間が足りない(笑)」と言わしめた質問が飛んだ。良かったことに「五輪に限らず、競技力が上がるにつれて、日本全国や海外といろいろな場所に行けたこと、そして世界がどんどん広がって友達がたくさん増えたこと」を挙げ、つらかったことに「五輪後にケガの影響で足が遅くなってしまった。陸上選手として会社からお金をもらっていたので、結果を残さないといけないのに残せなかったこと」を挙げたが、続けてこんな想いを子供たちに伝えた。

「そのつらい体験のときも、次の成功につながるようなヒントや勉強すべきことがあって。そのつらかった時期に学んだことが、大人になった今に活きていて、良い経験をしたなと思えているんです。ですから、皆さんもつらい経験をしたときに『これは自分が成長できるチャンスだ!』と思ってひと踏ん張りしてほしいです」

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伊藤 友広

元陸上五輪代表

国際陸上競技連盟公認指導者資格(キッズ・ユース対象)。

1982年8月16日生まれ。秋田県出身。国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。大曲高(秋田)で国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権400メートル5位、同1600メートルリレーはアンカーで優勝。国体成年男子400メートル優勝。卒業後は法大に進学。04年アテネ五輪男子1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
http://001sprint.com/

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