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“声出しだけの新入生”がいない 日本とは大きく違う、米国の部活制度と上下関係

新人いじめはもう昔? 「ルーキー・ヘイジング」は禁止傾向に

 前述したように米国の運動部は1軍、2軍に振り分けられるので、どちらかといえば1軍には上級生が多く、2軍には下級生が多くなる。新入生や下級生に、ボール拾い、練習道具の片づけを任せようとしても、1軍には新入生が1人もいない、ということもあり得る。

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 だからといって、米国の運動部には上下関係が全くないわけではない。1軍でも、そのチームの中での下級生たちが、練習や試合終了後に片付けをしている。

 これは、メジャーリーグでも同じことだ。昨年、オリックスから平野佳寿投手がダイヤモンドバックスに移籍した。日本では抑え投手として実績のあるベテランは34歳になっていたが、メジャーでは1年目。だから、中継ぎ投手陣の練習時にはボールの入ったバックを持ち運ぶという仕事があった。

 また、これまで多くの日本人メジャーリーガーが「ルーキー・ヘイジング」と呼ばれる新人通過儀礼で周囲を楽しませてきたことを記憶している人も多いだろう。新人選手は、先輩選手が用意した衣装を着なければいけない。2016年にはドジャースの前田投手がチアリーダーに扮した。

 しかし、メジャーリーグ機構は、選手に女装を強要すること、人種、国籍、性的指向、その他の特徴を強調する衣装を強制的に着用させることを禁止した。選手へのいじめであるとみなしたからだ。

「ルーキー・ヘイジング」は米国の学校運動部にもあった。1990年代の調査では米国の大学運動部員の80%が「ルーキー・ヘイジング」を経験しており、そのうちの42%は高校の運動部でも経験していたことが分かった。新人の通過儀礼を大義名分に、いじめが行われていたケースもあった。

 メジャーリーグに先立って、米国の運動部も新人通過儀礼やいじめを以前よりも厳しく禁止するようになった。米国の運動部には上下関係が全くないわけではない。しかし、新人いじめやしごきは、学校側が禁止し、生徒たちの意識の変化もあって、前の時代のものになってきているようだ。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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