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部活改革の選択肢にアスレチックトレーナーを 教員負担軽減のためにも提案したい一手

教員の負担軽減のためにもアスレチックトレーナー導入の一手を

 私は保護者として、ミシガン州デトロイト郊外の公立高校の運動部活動に必要な書類に署名している。そのなかに、保護者のリスクの引き受けに関する書類がある。ここには運動部活動には「死亡するリスクのあることを理解する」という文言がある。私が不安な気持ちになりながらも、このリスクの引き受けに私がサインしているのは、学校運動部が州の協会が定めた安全のガイドラインに従って練習や試合をしており、アスレチックトレーナーがいるからだ。

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 たとえば、脳震盪の疑いがあるときは、必ずその生徒を練習や試合から外してアスレチックトレーナーの診断を受けさせている。高3生の最後の公式戦であっても、アスレチックトレーナーが脳震盪だと診断し、試合に戻ってはいけないと判断すれば、コーチもきちんとそれに従っているというシーンを見てきたからだ。

 私の子どもが通う公立高校にはアスレチックトレーナーは1人しかいないので、アウエーの試合には帯同していない。しかし、アウエーの試合のときには、ホームになっている学校のアスレチックトレーナーが対戦相手校の怪我の応急処置を担当してくれる。

アスレチックトレーナーのいる学校運動部のほうが、そうでない学校運動部よりも脳震盪と診断されることが多いというデータがある。これは、脳震盪の見逃しが少ないことを示している。また、高校の女子サッカー部と女子バスケットボール部を対象にした調査では、アスレチックトレーナーのいる学校ではオーバーユースなどによる怪我はそうでない学校の半数程度、繰り返す怪我も明らかに少なかったという。

 日本では、運動部活動を指導する教員の負担の大きいことが指摘されている。活動中の安全を守るための責任が重いということもあるだろう。安全を守るため、怪我のリスクをマネジメントするための教員の負担が大きいのならば、アスレチックトレーナーにも学校に入ってもらうこともアリではないだろうか。

 それに、運動部活動は、生徒による自主的な活動であるべきだという意見もある。

 文科省の示したガイドラインに沿い、教員は顧問として見守り、生徒たちが自主的に活動する。活動中の怪我の予防や怪我の対応はアスレチックトレーナーに担当してもらう、というのも一手だろう。

 教員にかかる学校運動部の指導の負担をいかに軽減できるか。外部指導者、民間委託、地域移行、運動部の縮小など、いくつかの選択肢が挙げられている。ここにアスレチックトレーナーの導入というオプションが加えられてもよいのではないだろうか。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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