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今、部活で「痛い」と言えない君へ 体が壊れても日本一になりたかった大山加奈の願い

オンラインでインタビューに応じた大山さん【写真:編集部】
オンラインでインタビューに応じた大山さん【写真:編集部】

考えてほしい「目標」と「目的」の違い「それで考え方は変わる」

 どうすれば「無理」を回避し、「痛い」という心と体の本音と向き合うことができるのか。

「レギュラーを外されたくなくて、『痛い』というと『お前は弱い』と捉えられる風潮があります。そうなると選手たちは『痛い』と言えないですよね。『外されるかもしれない』『アイツはダメだと思われるんじゃないか』となってしまうから」

 そう理解を示しながら、実際につらい体験をした大山さんだから、考えてほしいことがある。それは、今、怪我と闘っている子供たち、休むことが怖いと思う子供たち、そして、彼らを指導する大人たちに。

「もちろん、目標を持って、それに向かって頑張ることは本当に素晴らしいと思います。それは否定することではありません。でも『目標』と『目的』の2つがきちんとあれば、考え方は変わってくると、私は思います」

 大山さんが挙げた「目標」と「目的」。その1文字違いの言葉の違いを理解することが大切になる。

 例えば、「日本一になりたい」「春高バレーに出たい」というのは目標。「バレーボールを通じて、どういう人間になりたいか」「バレーボールを続けて、将来どんな人生を歩みたいか」というのが目的になる。

 選手も、指導者も、どうしても抜け落ちてしまうのが「目的」だ。

 大山さん自身、「日本一になりたいという目標はあっても、バレーボールを通じてこういう人間になりたいという目標は持っていませんでした」といい、だからこそ「今の選手たちには持っておいてもらいたい」という。

 小学生であっても結果を出して周りから褒められたいと承認欲求を持ち、無理してでも頑張るのは無理のないこと。子供以上に責任を持つべきは大人の方だ。

「選手には『目標』と『目的』の両方を持ってもらいたいと思いますし、周りの大人がそうやって選手たちが考えられる環境を作ってあげないといけないと思います。大人が今、目先の勝利だけを考えてしまっているように思います。

 子供の将来や人生を考えず、ないがしろにする風潮が育成現場にあるのではないか。だから、子供も同じように勝利しか見なくなる。まず、大人が子供たちの人生を考えて接すれば、自然と子供も目が向くようになると思っています」

 指導者自身の承認欲求になることもある。全国大会で勝ち、名声が欲しいあまり子供を自分の道具のように利用してしまう。善悪の判断がつきにくく、大人に依存しやすい小学生年代は特に注意が必要だ。

 実際、大山さんは引退後に接した小学生チームで6年生の多くが滑り症(分離症)を抱えていると保護者から打ち明けられ、小学生レベルとは思えない過度な筋力トレーニングを課す場面を目の当たりにして愕然としたこともある。

 それは、自身が小学生だった20年以上前と何も変わらない現実だ。

 大山さんが小学生年代の全国大会廃止を訴える理由もこうした背景がある。そして今、育成年代で懸念しているのが、春高バレーの予選が始まり、戦っていること。ステイホームで長期間、運動できず、再び強度の高い練習をすることのリスクがある。

「さらに、今年最後で唯一の大会で気合いが入り、危ないと感じています。自分が思う以上に身体にはブランクの負荷がかかっています。すごく難しいと思うけど、頑張りすぎないでほしい、自分の身体を見つめてあげてほしいと思います。自分ではなかなか調整できませんが……」

 休みを与えればすべてが解決するわけではなく、コンディション状況はチーム、個人によってさまざま。また、高校で競技を引退するので完全燃焼したい、日本代表を夢見て卒業後も続けたいと、将来に描いている道も異なる。

「特に3年生は最後ですし、頑張りたいと思うのは当然のことだと思います。でも、今、怪我をしてしまうと、将来バレーボールをやろうがやるまいが、痛みを抱えて生きていく可能性があります。それは、本当につらいこと。

 一方で『春高に出たい』『試合に勝ちたい』と思ってしまう気持ちを将来に向けるのは難しい。私もそうでしたから。だから、指導者の方ができる限り選手の一人一人のコンディション、動きを観察して調整してほしいです」

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