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高校スポーツ中止にほっとするのはいけないこと? 米紙に載った2つの気になる見出し

「みんな」の輪に加われない高校生、この感覚をなかったことにするのは待って

 5月14日のシカゴ・サンタイムズ紙電子版には、こんな見出しがあった。「COVID19によってユーススポーツが縮小された。これは多くの子どもたちにとって勝利である」。こんな目に遭って、なぜ、子どもにとっては勝利であるといえるのか。

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「今の子どもたちの多くは生まれたときから、スケジュールのなかで生きている。5歳からチームに入り、7歳には1週間に5日練習している」とし、自由な遊びを取り戻す機会だと、記事は訴えている。

 しかし、記事を書いたガルシア記者は、選手たちの無念さも痛いほど感じている。「今年の夏、新型コロナウイルスのために、イリノイ州の10代の若者たちがスポーツできないのなら、私のハートは壊れてしまう。多くの選手は競技選手としての終わりに近づいているのに、彼らから、スポーツが奪われるのを見るのはつらい」。高校の最終学年の生徒が、高校生活を締めくくる公式戦を行えないことに胸を痛めているのだ。

 米国発の2つの記事は、高校生ではなく、小中学生を意識して書かれたものだ。けれども、もしかしたら、高校の最終学年の選手のなかにも、心密かにほっとしている人もいるかもしれない、と私は思う。米国にも、日本にも。

 最後の公式戦ができずに、みんな、悔しい、みんな、やり切れない。「みんな」の輪に加われない、複雑な気持ちもあるのではないか。

 今ひとつ情熱はなかったけど、最後までやり遂げなければという責任感で続けていた選手もいたかもしれない。勝利への重圧があったかもしれない。ベンチ入りできないのに、応援に行かなければいけないと考えて、うんざりしていた選手もいたかもしれない。受験に備えたいからちょうどよかった、感染するのではと不安を感じている人もいるだろう。

 そんなも気持ちは、どちらかといえば、誰にも触れてほしくない、胸にしまっておきたい本音のはず。誰かに言う必要はない。でも、この感覚をなかったことにするのはちょっと待ってほしい。いつか話してもよいと思える日が来て、その時、耳を傾ける人がいたら、高校スポーツの楽しみ方が一色や二色ではなく、何色かのグラデーションへと広がるかもしれない、と思う。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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